振込代行サービスは銀行振込を代わりに行ってくれるサービスで、大量の振込作業をまとめて任せることができ、銀行に出向く手間が省けたり、大量に依頼する場合は一般的な金融機関よりも振込手数料が安くコスト削減ができたりします。二重チェックで誤送金や不正のリスクを抑えられるため、安全性のために導入する企業も増加しています。
しかし、「振込代行サービスを導入する具体的なメリットは?」「振込代行サービスの選び方を知りたい」と考えている人も多いでしょう。
そこで本記事では、 振込代行サービスの概要や仕組み・メリットを解説します。振込代行サービスのデメリットやクレジットカードを活用した請求書支払いの方法についても紹介するため、気になる人はぜひ参考にしてください。

振込代行サービスとは企業の銀行振込を代わりに行うサービス
振込代行サービスとは、企業や個人事業主が行うべき銀行振込業務を、専門の決済代行会社が代わって実施してくれるサービスのことです。一般的に企業が取引先への支払いや従業員への給与振込を行う場合、経理担当者がネットバンキング上で一件ごと、もしくは全銀協フォーマットなどのデータを用いて振込手続きを行います。しかし、月末などの繁忙期において、振込作業は経理担当者にとって大きな負担となり、入力ミスなどのリスクが伴います。
振込代行サービスを利用すると、煩雑な手続きをアウトソーシングできます。銀行のインターネットバンキングを利用するよりも、振込手数料を安く抑えられるケースがあり、代行会社は銀行と大口の契約を結んでいるため、一般企業が単独で振り込むよりも安価な手数料設定を実現しています。振込代行サービスは単なる振込作業の代行だけではなく、企業のコスト削減と業務効率化を実現します。
特に経理のDX化を進める第一歩として、振込代行サービスを導入する企業が増えています。その仕組みや利用をおすすめする事業者は以下のとおりです。
それぞれ順に解説します。
振込代行サービスの仕組みは支払データを預けて外部が振込
振込代行サービスの基本的なフローは非常にシンプルかつシステム化されています。利用企業は会計ソフトや給与計算ソフトから出力した振込データを、代行会社の専用システムにアップロードします。振込に必要な資金の総額と代行手数料を、代行会社が指定する口座へ入金します。これだけで、利用企業側の作業は完了です。あとは指定された振込日に、代行会社から各支払先へ送金が実行されます。
振込代行サービスの仕組みにおいて、資金の安全性が特徴です。サービスによっては信託保全などの資金保全スキームを採用している場合があります。利用企業から預かった振込資金を、代行会社の運営資金とは完全に切り離し、信託銀行などの信託口座で管理する仕組みです。万が一、振込代行会社が倒産するような事態に陥ったとしても、預けていた資金は法的に守られ、利用企業へ返還されるようになっています。利便性だけでなく、セキュリティや資産保全の面でも堅牢な仕組みが構築されているため、安心して重要な決済業務を任せられるでしょう。
振込代行サービスが向いている事業者や個人
振込代行サービスの導入が特に向いているのは、毎月の振込件数が多く、手数料負担や事務作業の時間が経営を圧迫している事業者です。例えば、振込件数が月に数十件から数百件に及ぶ場合、銀行所定の振込手数料がかさみ、年間で数十万円単位のコストになることも珍しくありません。代行サービスを利用して手数料を一件あたり数十〜数百円程度安くすることができれば、一件ごとのコストは小さくても合計すると大きな利益改善につながります。
また、インターネットバンキングの操作に時間を取られている中小企業の担当者にとっても最適な選択と言えます。
さらに、振込代行サービスは複数の銀行口座を使い分けている事業者にも適しています。通常、銀行ごとにログインして手続きを行う必要がありますが、代行サービスに一本化すれば、一つの管理画面からすべての支払いを処理できるため、管理工数を劇的に削減できます。フリーランスへの報酬支払いやスポット的な返金業務が多いEC事業者など、振込先が頻繁に入れ替わる業態でも、マスタ管理の手間が省けるため非常に相性が良いと言えます。コスト削減を目指す企業はもちろん、コア業務に集中したいと願うすべての事業者にとって最適なサービスと言えるでしょう。
振込代行サービスのメリットは効率化とミス防止
振込代行サービスを導入する最大のメリットは、経理業務における効率化とミス防止の課題を解決できる点です。従来、経理担当者が毎月手動で行っていた振込業務は、件数が増えれば増えるほど時間がかかり、精神的なプレッシャーも増大します。しかし、振込代行サービスを活用することで、膨大な単純作業を省き、より付加価値の高い業務に集中できます。具体的な振込代行サービスのメリットは、以下のとおりです。
それぞれ順に解説します。
振込手数料をまとめて処理できコストを抑えられる
多くの企業が振込代行サービスを導入するメリットとして、コスト削減効果が挙げられます。通常、銀行のインターネットバンキングを利用して他行宛に振込を行う場合、一件あたり数百円の手数料が発生します。取引先や従業員が増えれば増えるほど、手数料の金額は膨れ上がります。しかし、振込代行サービスを利用すると、手数料を大幅に安く抑えられる可能性が高いです。
代行会社が銀行と大口の契約を結んでいるため、スケールメリットを活かした安価な手数料設定がされています。例えば、通常の手数料と比較して一件あたり100円以上の削減になるケースも珍しくありません。月に100件の振込がある場合、年間で数十万円のコストカットが実現できます。
また、複数の銀行口座から個別に振り込む場合に比べて、代行会社の指定口座に一度資金を移動させるだけで済むため、振込元の銀行ごとに発生していた資金移動の手数料や手間も削減できます。直接的な手数料削減だけでなく、間接的なコストも含めたトータルでの経費削減が期待できるでしょう。
振込作業を外部化して経理の負担を大きく減らせる
経理担当者にとって、月末や支払い日に集中する振込業務は、時間的にも精神的にも非常に大きな負担となるケースが多いです。一件ずつ口座番号や金額を入力し、間違いがないか何度も確認する作業は担当者の労力を削ります。振込代行サービスを利用して作業を外部化することで、経理部門の働き方改革につながります。例えば、会計ソフトなどで作成した全銀協フォーマットのデータを代行会社のシステムにアップロードするだけで、数百件、数千件の振込手続きがわずか数分で完了します。
これまで振込作業に費やしていた数時間から数日分の時間を、決算業務や財務分析、経営資料の作成といった、より生産性の高いコア業務に充てられます。また、担当者が急に休んだ場合でも、システム化されていれば他のメンバーが代行しやすくなるため、業務の属人化を解消できます。忙しいタイミングでも、確実かつ迅速に処理を行ってくれる代行サービスは、経理担当者にとって最適な手段と言えるでしょう。
支払情報がまとまり資金の流れを把握しやすくなる
振込代行サービスを活用するメリットとして、資金管理の一元化が挙げられます。複数の銀行口座を使い分けている企業の場合、どの口座からいつ、いくら支払ったかを把握するために、それぞれの通帳や入出金明細を確認し、突き合わせる作業が必要になります。非常に煩雑かつ資金繰りの状況をリアルタイムに把握する妨げにもなります。しかし、代行サービスを利用すれば、支払情報を一つの管理画面に集約できます。
いつ、誰に、いくら支払う予定なのか、実際に支払いが完了したのかといったステータスを、一目で確認が可能です。結果として、企業のキャッシュフローが透明化され、より精度の高い資金繰り計画を立てられます。また、過去の振込履歴もシステム上にデータとして蓄積されるため、後から特定の支払いについて確認したい場合も、検索機能を使って瞬時に情報を引き出せます。経理情報の見える化が進むことで、企業として経営判断のスピードアップにもつながります。
二重チェックで誤送金や不正のリスクを抑えられる
経理作業において誤送金や不正送金は最も避けるべきミスです。人間が手作業で行う以上、入力ミスをゼロにすることは困難ですが、振込代行サービスには、リスクを最小限に抑えるための機能が標準搭載されています。例えば、アップロードされた振込データの中に、口座番号の桁数不足や、存在しない支店コードなどの不備があれば、システムが自動的にエラーを検知して警告を出してくれます。振込実行前にミスに気づき、修正が可能です。
さらに、多くのサービスでは承認フロー機能が備わっています。担当者がデータを作成し、上長が承認して初めて振込が実行される二重チェック体制をシステム上で強制的に構築できます。単純なミスだけでなく、担当者による横領や不正な支払いを未然に防ぐ内部統制の効果も期待できます。セキュリティの高い環境で、組織として順を追ったプロセスを設定することで、企業の資産を守り、社会的信用を維持するために不可欠なリスクマネジメントと言えるでしょう。
振込代行サービスのデメリットはコストと情報管理のリスク
振込代行サービスは経理作業における画期的なサービスですが、銀行振込より手数料が高くなるケースや障害発生時のリスクが存在します。導入・運営コストと情報管理のリスクを把握しておくことで、効率的にサービスを活用できます。具体的な振込代行サービスのデメリットは、以下のとおりです。
それぞれ順に解説します。
銀行振込より手数料が高くなることがある
振込代行サービスを導入するメリットとして、手数料の削減がある一方、場合によっては銀行振込よりも手数料が高くなる可能性があります。振込1件あたりの手数料単価を見れば、一般的な銀行窓口やインターネットバンキングよりも安価に設定されているケースがほとんどです。しかし、振込代行サービスの利用には、振込手数料以外にも様々な費用が発生する場合が多いです。例えば、サービスの導入時にかかる初期費用や、システムを利用するための月額基本料などが挙げられます。振込件数が毎月数百件にのぼるような企業であれば、手数料の削減分でこれらの固定費を十分に回収できます。
一方で、振込件数が月に数十件程度と少ない企業の場合、削減できる手数料の総額よりも月額基本料の方が高くなってしまい、結果としてコストが増えるケースも珍しくありません。
また、当日振込や至急の対応が必要な場合には、オプション料金が加算されることもあります。導入を決定する前に、自社の月間平均振込件数と固定費のバランスをシミュレーションし、本当にコストメリットがあるのか見極めましょう。
支払データを渡すため情報漏えいリスクがある
振込代行サービスを利用する際は、自社の資金決済に関わる重要なデータを外部企業に預けることを意味します。取引先の企業名、銀行口座番号、支払金額、支払日といった機密性の高い情報が含まれます。社内で完結していた業務プロセスに外部の事業者が介在することになるため、その分だけ情報漏えいのリスクが高まります。
万が一、代行サービス業者のサーバーがサイバー攻撃を受けたり、内部の人間による不正持ち出しが発生したりした場合、自社の情報だけでなく、大切な取引先の口座情報まで流出してしまう恐れがあります。場合によっては社会的信用の失墜や損害賠償問題に発展する可能性も高いです。
多くの代行業者は「Pマーク」の取得や、高度な暗号化通信の採用など、銀行と同等レベルのセキュリティ対策を講じています。しかし、リスクを完全にゼロにすることは不可能です。サービスを選定する際は、コスト面だけでなく、どのようなセキュリティ体制が敷かれているか確認した上で導入しましょう。
サービス障害や遅延が起きると支払いも影響を受ける
振込代行サービスは、インターネット回線や業者のシステムサーバーを経由して処理が行われます。そのため、システム障害やサーバーダウン、通信エラーといったトラブルが発生した場合、振込処理そのものが止まるリスクがあります。自社のパソコンやネット環境が正常であっても、代行業者側でトラブルが起きれば、ユーザー側では対処できません。
給与の支払いや取引先への買掛金の支払いは、期日厳守の重要な業務です。システム障害によって支払いが1日でも遅れれば、従業員の生活に支障をきたしたり、取引先からの信頼を損なったりする重大な問題に発展します。
銀行のシステムも障害のリスクはゼロではありませんが、振込代行サービスを利用する場合は銀行のシステムと代行会社のシステムの二つのシステム問題が同時に発生することになるため、障害発生時のリスクは高まります。万が一の事態に備えて、代行サービスのシステムがダウンした際には、すぐに銀行のインターネットバンキングから直接振り込めるように準備をしておくなど、緊急時の対策を検討しておきましょう。
振込代行サービスの選び方は安全性と機能・費用のバランス
振込代行サービスは多くの企業が展開しており、どのように選択するべきか不安を抱えている人も多いでしょう。サービスを選ぶ際は、安全性と機能・費用のバランスが重要です。具体的に振込代行サービスを選ぶ際に抑えておくべきポイントは、以下のとおりです。
それぞれ順に解説します。
請求書・給与・定期支払いなど用途に合う機能を選ぶ
振込代行サービスの中でも、特徴や得意とする分野はサービスごとに大きく異なります。そのため、自社が「どのような支払業務を効率化したいのか」といった目的を明確にし、用途にマッチした機能を持つサービスを選びましょう。例えば、取引先への買掛金支払いがメインであれば、請求書を受け取ってから支払いデータを簡単に作成できる機能や承認フローをWeb上で完結できる機能が充実しているサービスが適しています。
一方で、従業員への給与支払いに利用したい場合は事前に確認が必要です。サービスによっては、振込人名義が代行会社名になってしまったり、給与振込としての取り扱いができず、従業員側の通帳にフリコミとしか記載されなかったりするケースがあります。給与として扱われないと、従業員が住宅ローンを組む際や優遇金利を受ける際に不利になる可能性があります。そのため、給与支払いに対応しているか、自社名義で振り込めるかといった細かな仕様の確認を行いましょう。
また、家賃や顧問料のように毎月決まった金額を支払う業務が多いなら、定期自動振込の機能が強いサービスが最適です。一度設定すれば毎月自動で処理されるため、支払い漏れを防げます。サービスを何に使うかを軸にして機能の有無をチェックしましょう。
振込件数と費用が自社の規模に合うか見極める
コスト削減は振込代行サービス導入の大きなメリットですが、単に1件あたりの手数料が安いだけで選ぶのは控えましょう。自社の月間振込件数と、サービス利用にかかるトータルコストのバランスを見極める必要があります。多くの代行サービスでは、振込手数料そのものは銀行よりも安く設定されていますが、その代わりに月額基本料や初期導入費がかかる料金体系が一般的です。
例えば、振込手数料が銀行より200円安かったとしても、月額基本料が数千円かかる場合、月に数件しか振り込まない企業では、かえってコストが高くついてしまいます。逆に、毎月数百件の振込がある企業であれば、月額費用を払ってでも単価の安いサービスを選んだ方が、コストメリットを得られます。
さらに、振込資金を代行サービス口座へ入金する際の手数料や組戻し手数料なども確認が必要です。複数の費用を含めたランニングコストが、現在の銀行振込と比較してどれくらい削減できるのかを試算しましょう。サービスによっては初期費用0円・月額0円で手数料が高めのプランを用意していることもあるため、自社の規模に最適なプランを選択しましょう。
情報管理体制やセキュリティ認証を確認する
振込代行サービスを選ぶ際は、セキュリティと資金の安全性は非常に重要なポイントです。万が一、情報漏えい事故が起きれば、自社の社会的信用は失墜します。導入する事業者がPマークやISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの第三者認証を取得しているか確認が必要で、個人情報保護やセキュリティ管理の体制が一定の基準を満たしていることの証明になります。
また、データの通信が暗号化されているか、ログイン時の二段階認証などの不正アクセス対策が講じられているかも確認するべきポイント。さらに、データだけでなく預けた資金そのものの安全性も重要で、信託保全を採用している業者が最適です。信託保全を導入していれば、利用者から預かった資金を、代行会社の資産とは切り離して信託銀行などで管理しています。万が一業者が破綻しても預けたお金は守られるため、コストの安さだけでなく、複数の安全策が講じられているかを必ず確認しましょう。
CSVや会計ソフトなど普段のシステムと連携できるか確かめる
経理担当者の業務負担を減らすためには、既存のシステムといかにスムーズに連携できるかが重要です。振込代行サービスを導入しても、振込先や金額を手入力しなければならない仕様であれば、入力ミスや工数の増加を招きます。本末転倒になりかねません。そのため、現在使用している会計ソフトや給与計算ソフト、販売管理システムとの連携性を確認しましょう。
多くの業務ソフトは、支払データを全銀協フォーマットやCSV形式で出力する機能を搭載しています。選定する代行サービスが、ファイルをそのままインポートできる仕様であれば、データ入力の手間はほぼゼロになります。手入力を介さないことは、入力間違いや金額の桁間違いといったヒューマンエラーを無くすポイントです。
サービスによっては、API連携によってファイルを書き出す手間さえなくし、会計ソフト上のボタン一つで振込データを送信できるケースがあります。自社の経理フローを振り返り、どのソフトからデータを出力しているかを確認した上で、データ形式に対応しているサービスを選びましょう。無料のトライアル期間などがあれば、実際にデータを流し込んでみて、エラーが出ないか、操作が直感的か、導入後の定着率も合わせて確認しましょう。
トラブル対応やサポートの質も見ておく
新しいシステムを導入する際、操作方法が分からなくなったり、予期せぬエラーが発生したりするケースは珍しくありません。特に経理業務は締日や支払日が決まっておりシビアな業務です。そのため、トラブルが発生した際にどれだけ迅速かつ丁寧に対応してくれるサポートの質も、選定時の重要な判断材料です。
サポート窓口の連絡手段と対応時間の確認が必要で、メールやチャットのみの対応というサービスも増えていますが、急いでいる時には電話で直接オペレーターに相談できる窓口がある方が安心感があるでしょう。また、対応時間が平日の日中のみなのか、Web操作に関するFAQサイトやマニュアルが充実しているかどうかもチェックしておきましょう。
加えて、導入時の初期設定や従業員への操作説明会などをサポートしてくれるプランがあるかどうかもポイントです。特にITツールに不慣れな担当者がいる場合、手厚い導入支援があるサービスを選ぶことで、スムーズな運用開始が可能になります。コスト面だけではなく、長く安心して使い続けられるパートナーとして信頼できる業者か、口コミや導入実績なども参考にしながら見極めましょう。

