「〇〇〇万円の壁」と言う言葉が話題になっていますが、この壁は所得税や住民税だけのものではありません。社会保険料についても壁が動くことで大きな影響を受けます。
社会保険料(厚生年金や社会保険)は会社の場合、労使で折半しますが、その対象となる従業員が2024年より大きく拡大しています。社会保険料の会社負担が増えていく中で、期限までに支払えないおそれも出てきました。社会保険料の滞納はその会社の社会的信用にも大きくマイナスの影響を与えます。差押えを受ければ大変なことになってしまいます。
しかし、高利で資金調達してもそれが後々自社の経営体力を奪ってしまうことにもつながりかねません。せめて1か月社会保険料の支払いを先延ばしにできれば資金を用意できる、そう言う会社も少なくないはずです。
そこで注目されているのが社会保険料のクレジットカード払いです。法人カードによるクレジットカード支払い代行サービスを用いることで、目前に迫った支払いを後ろ倒しにできるかもしれません。
今回は社会保険料の支払いにも対応したクレジットカード払い代行サービスについて紹介します。
法人の社会保険料は代行サービスでクレカ払いできる
社会保険料についてはその重大性もあり、「請求書カード払い」に非対応の代行サービスがほとんどでした。しかし、原理的には請求書カード払いが可能で、徐々に対応できるサービス会社が増えてきました。社会保険料の納付書を他社の人が銀行の窓口まで持っていくのはさすがにできません。
電子納付なら、納付書番号さえあればでき、その際にはサービスを購入した会社の名前で納付できます(窓口に行かなくて済む)。請求書カード払いで社会保険料の支払いへの対応が遅れていたのは、代行会社が社会保険料の支払いに対応している識別番号の取り扱いに躊躇していたことがあります。
- 「この請求先へ○○○○円支払い代行してください」(従来の請求書カード払い)
- 「年金事務所へ社員○○名分の保険料を支払い代行してください。自社の識別番号は△△△△でこの納付書を使って」(社会保険料の請求書カード払い)
上記では当然後者の方が手続きが複雑になるためです。
請求書カード払いによる社会保険料の支払いについて、流れとしては以下になります。

- 社会保険料(厚生年金、社会保険)の請求書(兼納付書)が届く
- 「請求書カード払い」の運営会社に請求書を渡す
- 同時にクレジットカード(法人カード)で「社会保険料を代わりに支払うサービス+手数料」を購入する
- 期日までに代行サービス会社が電子納付をメインに代行して支払う
- クレジットカードの引き落とし日まで30日~60日の支払い猶予ができるので、それまでに社会保険料分のキャッシュを口座に用意する
- 法人のクレジットカード支払日に法人口座から「社会保険料+手数料」が引き落としになる
これが可能になるので、社会保険料の滞納、支払い遅延を起こさず、手元にキャッシュがない場合でも、30日~60日の猶予ができ、実質「後払い」できるようになりました。
社会保険料の支払いにも対応したクレジットカード払い代行サービスの紹介や社会背景は以下の通りです。
それぞれ順に解説します。
法人の社会保険料をクレカ納付できる代行サービス3選
法人の社会保険料について「請求書カード払い」の仕組みを使ってクレジットカード払いできる運営会社はまだ限られています。健康保険料は公的なものなので、代行して支払うにしてもさまざまなチェックポイントがあるからです。しかし、徐々に社会保険料の支払い代行を引き受ける会社も増えてきつつあります。
注意していただきたいのは、クレジットカードの利用上限を超えての支払いはできません。他の用途でクレジットカード払いしている場合は、上限額を超えてしまうかもしれないので、依頼する前にしっかり確認してください。
それでは法人の社会保険料をクレカ納付できる代行サービスを3社紹介します。
SA請求書カード払い

手数料 | 一律4% |
---|---|
最長支払い延長期間 | 60日 |
利用限度額 | 1万円~上限なし(クレジットカードの利用上限) |
社会保険料の支払い方法 | 納付書をアップロード |
審査 | 原則なし |
取扱カードブランド | VISA、Mastercard、セゾン |
利用対象 | 法人、個人事業主 |
運営会社 | 株式会社サウスエージェンシー |
SA請求書カード払いは、一般的な請求書カード払いと同様に、買掛金をクレジットカードで後日決済できるサービスです。資金繰りの改善に貢献し、売掛金の回収遅延による支払い困難や、仕入れ資金・税金・固定費の確保など、企業の資金管理に関する課題をサポートします。
本サービスはオンライン完結型で、原則として書類提出や請求書のアップロードが不要なため、簡単に利用可能です。さらに、最短翌日支払いに対応しており、急なケースでも対応できます。
SA請求書払いは社会保険料の支払いにも対応しています。ただし、社会保険料の支払いについては納付書のアップロードをお願いします(他の買掛金支払いは不要)。納付書アップロードについては、立て替え払いの際に納付書記載の番号が必要になるからです。
みなさまの会社名義で社会保険料を電子納付いたします。手数料は4%と低く、ポイント還元率の高いクレジットカードを利用すれば、実質的なコスト負担を軽減できます。
支払い.com

手数料 | 一律4%(税込み4.4%) |
---|---|
最長支払い延長期間 | 60日 |
利用限度額 | 1万円~上限なし(クレジットカードの利用上限) |
社会保険料の支払い方法 | 納付書をアップロード |
審査 | 原則なし |
取扱カードブランド | VISA、Mastercard、セゾン |
利用対象 | 法人、個人事業主 |
運営会社 | 株式会社UPSIDER |
支払い.comは、法人向け社会保険料支払い代行を最初に始めた請求書カード払いサービスです。株式会社UPSIDERと東証プライム市場に上場するクレディセゾンとの共同運営により、高い安全性と信頼性を確保しています。3Dセキュアを導入し、不正利用を防止しているため、クレジットカードの登録も安心して行えます。
本サービスを利用することで、社会保険料の支払い期限を最大60日まで延長でき、急な支払いが発生した際にも柔軟に対応可能です。手続きはすべてオンラインで完結し、最短翌営業日に振込が行われます(利用するカードや申請タイミングにより異なります)。
社会保険料のカード払いについては「法人限定」で行っています。納付書をアップロードしてください。領収証の発行はしませんので、年1回の控除証明書を直接公的機関から受け取ってください。期限を過ぎた社会保険料の支払いについても対応します。
また、セゾンカードやUPSIDERカードなどを利用することで、社会保険料の支払いがさらに迅速になります。
LP請求書カード払い

手数料 | 2.95%(最低手数料額600円) |
---|---|
最長支払い延長期間 | 60日 |
利用限度額 | 上限なし(クレジットカードの支払い上限) |
社会保険料の支払い方法 | 納付書をアップロード |
審査 | 原則なし |
取扱カードブランド | VISA、Mastercard、JCB |
利用対象 | 法人、個人事業主 |
運営会社 | 株式会社リンク・プロセシング |
「LP 請求書カード払い」は、最大60日間の支払い延長が可能なサービスで、資金繰りに余裕を持たせられます。急な出費にも対応できるため、いざと言うときに役立ちます。
本サービスは初期費用や月額料金が一切かからず、手数料は業界最安水準の2.95%と低コストで利用できます。申込みはオンラインで完結し、即日利用開始が可能です。カード決済は最短1分で完了するため、スピーディーに支払いを終えられます。
対応クレジットカードブランドはVISA・Mastercard・JCBの3種類で、クレジットカードのポイントが貯まるメリットがあるほか、時間を気にせず24時間支払い手続きができる利便性も魅力です。
社会保険料の支払いについては以前は対応していませんでしたが、法人限定でこの度開始いたしました。厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料等が対象になります。
従来の納付方法ではクレジットカード支払いができない
従来、法人の社会保険料の支払いについては「納付書を金融機関に持っていく」「口座振替」「電子納付:Pay-easy(ペイジー)」の3種類に限られています。
自営業などが支払う社会保険料である国民年金や国民健康保険はクレジットカード払いが認められていますが、法人の社会保険料については、この3つの支払い方法に限定されています。
法人のクレジットカードで支払い、30日~60日先が口座から引き落としになる手法は使えません。そこで上記のように「請求書カード払い」が役立ちます。口座振替の設定をしていなければ、納付書が届くのでそれを代行会社によって期日までに振り込んでもらうことが可能です。
2024年10月の社会保険適用拡大で企業の資金繰りに懸念

正社員の社会保険料(厚生年金、社会保険(医療保険))については、本人と会社が折半して支払うことは広く知られています。厚生年金は国民年金に上乗せして積み立てられ、老後の給付が厚くなります。また社会保険についても、保険組合に加入することで、国民健康保険よりも安い金額になります。
自営業はすべて自分で支払わなければならない社会保険料も、会社ならば会社負担があるため、労働者負担は少なく、かつ厚くなります。
2024年の社会保険適用拡大は、それまで加入義務がなかった「被保険者数が常時51人から100人の企業の短時間労働者」についても、会社負担で社会保険に加入しなければならなくなりました(逆に言うと、それまでは以下の方々は社会保険に加入せず、自営業と同じ「国民年金・国民健康保険」に全額自腹で加入していました)。言うまでもなく、フルタイムの正社員は規模を問わず社会保険に加入します。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある(一般の被保険者と共通)
- 学生ではない
社会保険を拡大することで、給付が多い厚生年金の加入者を増やし、老後に困窮することを防ぐのが大きな狙いです。しかし、パートやアルバイト分も社会保険料を支払うことになった「被保険者数が常時51人から100人の企業」は負担増になり、社会保険料(折半分)を支払えないおそれが出てきました。滞納はペナルティがありますのですが、かといってキャッシュを用意できない場合困ってしまいます。
消費者金融など信用情報に影響する資金調達は避けたいものですが、そこで役立つのが「請求書カード払い」のシステムです。
法人の社会保険料をクレジットカードで納付するメリット

法人の社会保険料の支払いを現金払いや口座引き落としではなく、クレジットカードで納付するメリットについて紹介します。メリットが大きいと感じれば、ぜひクレジットカード払いもご検討ください。
それぞれ順に解説します。
社会保険料滞納による差押えや倒産のリスクを軽減
社会保険料の支払いを滞納すると、各種機関が差押えに動く可能性があります。自営業など個人の社会保険料の支払いについては、ある程度待ってくれることもありますが、例えば国民年金の支払いについても、年金事務所が強制的に差押える範囲がどんどん拡大されています。また、滞納を見逃す期間についても、現在は数か月滞納で督促が来ます。
法人の場合は、個人の社会保険料の支払い以上に厳しい対応が予想されます。そのため、まず期日までに支払うことが重要です。とは言え、先立つお金がない場合困ってしまいます。
請求書カード払いのシステムを利用してクレジットカード払い代行会社を挟むことで、社会保険料の支払い期限に待ち合わせ、かつ実際の支払いを後ろ倒しにできます。少なくとも滞納にはならないので公権力による差押えリスクはなくなります。
また、無理に現金を工面して必要な資金を社会保険料の支払いに回すことも避けられるため、不渡りを起こして倒産してしまうリスクも軽減できます。
クレジットカード払いによって、「期日までに現金で支払う」と言う義務を免れられるのはとても大きなメリットになるでしょう。
原則審査が不要で当日からサービスを利用できる
クレジットカード払いは、カードで「社会保険料を代わりに支払うサービス+手数料」を購入することです。つまり、サービスを購入する時点でクレジットカード払いできる状態であり、クレジットカード会社の審査は下りています。
ネットショッピングで物を購入するのと「社会保険料を代わりに支払うサービス+手数料」を購入するのは、購入するものが異なるだけで、建付けは同じです。そのため、融資やファクタリングのように審査がありません。
社会保険料のクレジットカード払いを申込みしたその日から、サービスの利用が可能です。
クレジットカードを持っている時点で一定の審査基準に達している、と言うことになります。
ローンやファクタリングと比較して手数料が低い
請求書カード払いの手数料はおおよそ3%~5%程度です。これを他の資金調達方法と比べてみましょう。
比較項目 | 請求書支払い代行サービスの手数料 | ビジネスローンの手数料 | ファクタリングの手数料 |
---|---|---|---|
手数料 | 3%~5% | 15%~20%弱 (利息制限法の上限付近) ・10万円未満 20% ・10万円以上100万円未満 18% ・100万円以上 15% | 2社間ファクタリング 10%~20% 3社間ファクタリング 1桁%(10%未満) |
このように手数料(率)を比較すると、請求書カード払いが最も安くなっています。そのため、緊急に資金調達が必要になった場合も、請求書カード払いが最も手数料負担を下げられます。
ちなみに、クレジットカードのキャッシング機能によって現金を調達する方法もありますが、キャッシングの手数料(金利)はビジネスローンと変わらず、利息制限法の上限付近(15%前後)になります。そのため、クレジットカードのキャッシングで社会保険料を調達するよりも、請求書カード払いのシステムを利用した方がはるかにお得になります。
資金調達してある程度「遊び」がある運転資金が欲しい場合は、融資、ビジネスローン、ファクタリングになりますが、使用使途がはっきりしている支出については、請求書カード払い、請求書支払い代行サービスを使った方が、結果的に自社が負担する(持ち出しになる)手数料負担を大きく減らせます。
クレジットカード決済でポイントやマイルが貯まる
請求書カード払いのシステムを利用すれば、クレジットカードで「社会保険料を代わりに支払うサービス+手数料」と言う商品を購入したことになるので、購入額(=社会保険料+手数料)に応じてポイントやマイルが貯まります。
そのポイントやマイルで別のものを購入したりキャッシュバックを受けたりすることも可能になります。融資やファクタリングではそのようなサービスはありません。
とはいえ、ポイントやマイルによる還元>手数料になることはありませんので、クレジットカード決済を多用して儲けると言うことにはなりません。あくまで付随的にポイントやマイルが貯まって多少得をすると言うイメージでいてください。
法人の社会保険料クレジットカード払いに関するよくある質問
法人の社会保険料クレジットカード払いに関するよくある質問についてQ&A形式で回答いたします。参考にしていただき、問題なければ一度やってみるのも悪くないと言えるでしょう。
代行サービスでクレカ払いできる社会保険料の種類は?
代行サービスでクレカ払い可能なのは下記の3つです。
- 厚生年金保険料
- 健康保険料(社会保険)
- 介護保険料
従業員と会社で折半している保険料です。これ以外の「雇用保険」などについては基本的に対象外です。ただし、法律で禁止されているわけではないので、今後対象となる保険関係の費用が拡大する可能性はあります。3つの保険料以外のクレジットカード払いも検討したい場合、今回紹介した代行会社に聞いてみてください。
社会保険料をコンビニでクレジットカード払いできますか?
できないとご認識ください。コンビニにおける請求書支払いは基本的に現金のみ対応しており、クレジットカードをはじめ、交通系電子マネーやデビットカード、バーコード決済、各種商品券などでの支払いはできません。
ただし、店舗によっては一部のサービスに限り、電子マネーを活用した決済が可能な場合もあります。例えば、セブン-イレブンではnanacoへのチャージ、ファミリーマートではファミマTカードのクレジット決済、ミニストップではWAONへのチャージが利用できるといった例が挙げられます。
しかし、コンビニ払いがたとえできても30万円以上の振込はできません。50名を超える会社の社会保険料が30万円を下回ることはあまり考えられません。
いずれにしても、今回社会保険の適用拡大になった会社においては、下記の2点から、現実的ではないことにご注意ください。
- そもそも社会保険料のコンビニ払いでクレジットカードは使えない
- コンビニ払いが可能な30万円を下回る可能性はあまりない
コンビニを使うくらいならば、納付書を請求書カード払いの会社に渡して、そこから直接銀行払いで支払い代行してもらうことをおすすめします。いずれにしてもコンビニ払いは避ける、が答えになります。
従業員50人以下ですが社会保険適用拡大は今後どうなる?
社会保険料適用拡大の背景は、少子高齢化によって今までの社会保障モデルが通用しなくなり、老後の費用(年金等)については可能な限り厚生年金で積み立ててほしいと言う要請があります。また、病院やクリニックにかかる高齢者が多いため、その医療費を負担するための健康保険制度も破綻の危機に陥っています。
特に国民健康保険は財政的に厳しく、まだ比較的マシな社会保険(団体健保)へ少しでも移行してもらうことを念頭に置いています。
そのため、今後少子高齢化が改善されないわけですので、もっと従業員数が少ない会社への社会保険適用拡大はあっても、その逆はないと考えてご準備をお願いします。